CGを活用するなら知っておきたい基礎知識として「CGのメリットとデメリット」があります。
近年では多くの映像作品でCGが活用されています。映画やテレビドラマはもとより、企業広報映像や商品PRなど、とにかくCGを使っていない事例を探すほうが難しいくらいです。
コストもかかり、時間もかかるのに、なぜこれほどCGは普及しているのでしょうか?
プロの映像制作者がCGを活用するのは主に以下の場合です。
・現実には存在してもカメラ撮影ができない映像を作る場合
・実写で撮影できても効率が悪かったりコストがかかったりする場合
・本質的な要素のみ残して余計な情報を削除した映像を作りたい場合
現実には存在しない世界観
現実には存在しない映像というのは、例えば江戸時代や宇宙空母などのことです。映画などでは架空の世界や遠い未来や過去の世界を映像化する場合などが当てはまります。
昔は模型を使ったりセットを使ったり、絵を映像にはめ込み合成するマットペインティングなどを使って何とかやりくりしていたのですが、こうした手法ではできることに限りがあり、限界があります。しかしCGならこうした限界もかなり打ち破ることができます。
最近では映画のように比較的大きな予算の作品でなくても、テレビ番組の情報バラエティなどもこうしたCGの活用をしている事例が見受けられます。
例えばテレビ朝日の『シュシュ』という深夜番組では、江戸時代や明治時代の人々の暮らしぶりをCGを使って映像化するなど、かなり思い切った使いかたをしています。深夜番組ですので予算観はそれほど高くは無いはずなのですが、近年の技術的蓄積もあるのでしょう。
また、映画やテレビ番組のような作品に限らず、商品PRなどの場合も、今現在は存在しない商品を設計図やCADデータからCG動画にする場合があります。こうした使い方はCG制作コストの低減と共に今後も伸びていくのではないでしょうか。
カメラ撮影できない映像
現実には存在していてもカメラでは絶対に撮影できないものがあります。例えば太陽を間近に見るような映像です。カメラをそこまで持っていくことそのものがまず難しいですが、持って行けたとしてもカメラそのものが熱で溶けてしまうでしょう。しかしこうした映像もCGであれば可能です。
また小さすぎて撮影できないという場合もあるでしょう。素粒子の振る舞いなどを映像化する場合、電子顕微鏡ですら撮影できないサイズです。その上、量子論で示唆されるように、私たちが経験している常識とは全く違う振る舞いをしているのですから、その概念を可視化するためには、ちょっとした説明手順の工夫ももちろんですが、CG技術が必須になります。
さらに動いているエンジンの内部の構造などもカメラでは撮影困難です。エンジンは閉じていなければ動かないものですので、動いているエンジンの内部は基本的に撮影が困難でCGの出番と言えます。
実写では非効率かつコストがかかる場合
実写で撮影することはできても、コストがかかり、CGで映像化するコストと天秤にかけて、CGを選択する場合もあります。
例えば爆発シーン。セットを組んだり、実際の建物を爆破するとなると大変なコストがかかります。しかしCGであれば近年の進んだ物理演算によって、かなりきれいな爆発シーンを安価につくることが可能です。
もちろん役者の周辺だけセットを組んで、そこを実際に爆破し、背景になる大きなサイズの爆発をCGで作り込み、合成して一枚の映像にするなどの方法も行われています。
余計な情報を省きたい場合
余計な情報を省いて本質だけ映像化したい場合などもCGの出番です。カメラで実写撮影すると、本質以外に余計なものがたくさん映り込みます。これらが邪魔になり、視聴者の理解を阻むのです。しかしCGなら本質部分だけをモデリングして映像化できますから、一目で直観的に理解することを助けます。視聴者側の理解のための努力が不要になったり、理解までの時間が短くなるなど、テレビのように視聴率を争う場では、特に活用したいCGの利点です。
また、要点以外をモデリングしないことでCG制作の費用も節約することができます。まさに「安価で効果的」なCGの活用法ではないでしょうか。
映像制作ディレクター/CGクリエイター
1968年東京都出身『あるある大事典』『万物創世記』『スーパーJチャンネル』など有名番組でディレクターを担当。
現在、総合映像プロダクションでありながらCG制作やイラストアニメーションまでを自社で行い、こうした多彩な素材を活用したマーケティング動画やメディカル映像などの制作を行うデキサホールディングス株式会社の代表。
>>参考リンク~デキサHDのCG制作ページ